最近SNSなどで見かける「失業保険、増やせますよ!」の文字。
これ、実はトラブルになるケースが増えていると国民生活センターが警鐘を鳴らしているのです。
今回は実際に「失業保険増やせますよ」というサービスをしている業者に取材しつつ、注意点などをまとめていきます。

私も広告案件で話が来たんだけど、ちょっと「ん?」って思ったので深掘りしてみたよ!
(参照:https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20251203_1.html)
そもそも失業保険とは
失業保険(正式には雇用保険の基本手当)は、離職後に生活の不安を和らげ、再就職までの生活を給付金で支援するための公的制度です。
給付額や給付日数は、離職前の給与や年齢、雇用保険の加入期間など、法律で定められた条件によって決まります。

カンタンに言えば「急に無給になった人のための生活保護」みたいなもの。
とはいえ自己都合退職は「急に」ではないからこそ、この後出てくる給付制限があるよ!
(参考:https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000951119.pdf)
そもそも失業保険はどう決まるのか?事実と誤解
失業保険(失業等給付)は、ハローワークでの申請と行政の審査を経て個々人の条件に応じて給付額や期間が決定されます。
失業保険は、会社を退職したあとにハローワークで手続きを行うことで受給できます。
まず、離職票を持ってハローワークに行き、求職の申し込みと受給資格の確認を受けます。その後、原則として7日間の待期期間があり、自己都合退職の場合はさらに2か月の給付制限期間が設けられます。
定期的に「失業認定日」にハローワークへ行き、求職活動の実績を申告することで、認定された分の失業保険が支給されます。
- 賃金日額(基準になる金額)を算出する
離職前の直近6か月間に支払われた賃金(賞与等を除く)を合計し、180で割ることで「賃金日額」を算出します。 - 給付率(支給割合)をかける
この賃金日額に、年齢や賃金水準に応じた給付率を掛け合わせます。一般的には 50%〜80%の範囲(60〜64歳は45〜80%)です。給料が低いほど給付率は高くなります。 - 基本手当日額(1日あたりの支給額)が決まる
「賃金日額 × 給付率」で1日あたりで受け取れる基本手当日額が計算されます。 - 上下限額のルールがある
計算された日額は、年齢ごとに定められた上限額と下限額の範囲内に調整されます。高い賃金でも一定以上にはならず、低い賃金でも最低ライン以下にはならない仕組みです。 - 受給日数にも法令のルール
受給できる日数は、退職理由や雇用保険に加入していた期間によって決まります。これは「給付額」ではなく、支給される日数の違いですが、実際に受け取れる金額に影響します。
この一連の流れは全国共通で、特別な裏ルートや例外的な方法はありません。しかし、上記のように複雑で分かりづらいからこそ、「制度をハックしてサポートしてくれるサービス」に需要があるのも頷けます。

不正を防ぐための複雑さなんだろうけど、結局ハックされてるやないかーい
なぜ「失業保険が増える」というサービスに注意が必要なのか?

近年、「失業保険の給付額や給付期間が増える」とうたう申請サポートサービスに関する相談が全国の消費生活センターに多数寄せられています。
2021年度は42件だった相談件数が、2025年は10月時点でもう216件!
まだまだマイナーなサービスではあるものの、社会問題になりつつあります。

インスタのDM経由で、我々発信者にガンガン営業かけてる事業者もいる…
そしてその怪しい事業者をPRしてる、フォロワー数万人のインフルエンサーも…
ケース1給付額がもらえなかった
多くの相談では、依頼したにもかかわらず給付額が増えなかったという内容が目立っています。
事業者側の宣伝文句が過度な期待を抱かせるものであるため、利用者が真実を誤解してしまうケースが問題になっています。
たとえば「退職後の受給額増額は難しい」と書いてあるにもかかわらず、利用者がよく読まずに利用してしまったケースも考えられます。
ケース2違約金が発生した
失業保険の申請がめんどうになったり、ハローワークに行っても増える見込みがなかった場合、本来は利用者の希望で申請を止めることができるはず。
しかし、一部の事業者は途中での解約を認めず、違約金を支払うよう求めるケースがありました。
利用規約や契約内容に違約金についての記載があったかは不明ですが、そもそも契約を結んでいない場合は問題です。
ケース3虚偽の受診結果を求められた
失業保険の給付額を増やす(待機期間を減らす)ために、鬱病などの虚偽の診断結果を求めるよう誘導されるケースも。
実際に受診した結果として鬱病が診断されるなら問題ないですが、「鬱病と誤診させるマニュアル」を利用して失業保険の給付額を増やした場合、不正受給に当たる可能性があります。
ケース4非弁行為に当たる可能性がある
最近は退職代行サービスが問題になりましたが、こちらも「非弁行為(弁護士でない者が報酬を得る目的で法律事務を扱うこと)」に当たるケースも。
たとえば個別的な事情を聞いたうえで「ハローワークでこの主張を言えば給付制限が緩和されます」と具体的なアドバイスをしていた場合、法律事務と見なされる可能性があります。
失業保険の給付額を増やせるからくりとは
そもそも失業保険の給付額を増やすことなんてできるのでしょうか。

実は私の元にも「失業保険の給付額を増やせる」とうたう案件が舞い込んできたので、詳しく聞いてみました!
まず、自己都合による退職の場合は給付までに2~3か月かかります。
しかし、「やむを得ない場合」=特定受給資格者・特定理由離職者に関しては、その給付制限が緩和される可能性が上がります。
また、病気やケガ、妊娠や介護などですぐに働くことができないと判断された場合は、受給期間が延長できます。
これらを目指すために、良くも悪くもある種の「小細工」をするとのことでした。
健康状態による退職
先ほどの「ケース3」もこちらに当たります。
もちろん、自分で選んだ病院で、本音を話した上で診断書がもらえて、その診断書を元に給付を申請する分には問題ありません。
私が話を聞いた事業者は「診断書をもらいやすい病院のあっせん」「診断書をもらえるアドバイス」を提供していると聞き、かなり黒に近いグレーのようなことをしているな…と感じ、さすがに案件はお断りしました。

余談だけど、営業担当の対応もすこぶる悪かった…笑
家族の介護による退職
家族の介護が常時必要になったために退職を余儀なくされた場合も、「やむを得ない事情」と受け止められる可能性があるようで、その点を利用するようでした。
こちらも、本当のことであれば問題ありませんが、虚偽の申請をして給付金を受け取った場合はもちろん不正受給に当たるのでやめましょう。
教育訓練を受講する
ハローワークの提供している教育訓練・職業訓練を受けることで、7日間の待期期間後すぐに受給できる可能性もあります。
講座は基本的に無料で受講でき、離職前に受講した場合も、過去1年以内であれば申請可能です。
ただし、訓練内容や通所距離などの条件もあるため、こちらも自分で申請する場合は事前に最寄りのハローワークに確認しましょう。
失業保険を増やすサービスを使うと違法?
サービスを利用すること自体が、直ちに違法になるわけではありません。
ただし、特に注意が必要なのが「不正受給を促すかのような誘導があるケース」です。
事実でない内容で申請すると、不正受給として本人が責任を問われる可能性があります。不正受給が認定されると、受給した額の返還だけでなく、場合によっては罰則が科されることもあります。
実際、国民生活センターには、働いている事実を隠すよう誘導された、診断を受ける必要がないのに受診を勧められた、といった相談も寄せられています。
仮に事業者の指示であっても、不正受給と判断された場合、責任を問われるのは申請した本人です。「任せれば大丈夫」と思い込まず、違和感を覚えた時点で立ち止まることが重要です。

本件に限らず、「え、これ大丈夫なの?」と思ったらまず調べよう!
契約前に確認すべきことは?
申請サポートの契約前には、サービス内容、料金、解約条件を事前に慎重に確認することが重要です。
特に違約金が発生する場合や、曖昧な条件がある場合、解約時に利用者に不利になりそうな記述がある場合は必ず事業者に明確に確認しましょう。万が一の「言った言わない」を防ぐために、できればメールで証拠を残しておくことも重要です。
困ったときの確認先は?
失業保険の制度は、個々の状況によって適用条件や取り扱いが異なる場合があります。そのため、給付額や受給期間について不安や疑問がある場合は、民間サービスを利用する前に、公的機関へ確認することが重要です。
まず相談すべき窓口は、管轄のハローワーク(公共職業安定所)です。失業保険の受給条件や、受給期間の延長、職業訓練の扱いなどについて、無料で説明を受けることができます。実際の手続き可否も、最終的にはハローワークの判断となります。
また、制度の全体像や最新のルールについては、厚生労働省の公式サイトや公表資料を確認することで、正確な情報を得ることができます。インターネット上の情報やサービスの説明と食い違いがある場合は、必ず公式情報を基準に判断しましょう。

「気になること+厚生労働省」って調べると出てきたりする!
契約後に不安を感じた場合には、消費生活センターに相談するのも有効です。
私も別件で相談したことがありますが、かなり親身になって聞いてくれました。
【知らなきゃ損】正当な範囲で失業保険の受給額を増やすには?
とはいえ、やっぱり「いつまで無給か分からないのは不安すぎる」「2~3か月も失業保険が出ないなんて耐えられない」という人も多いですよね。

私も過去に会社を急に退職せざるを得なくなったことがありましたが、そのときは無知だったので失業保険をもらわないまま再就職しました…
ここからは、厚生労働省の資料を基に、正当に失業保険の受給額を増やす方法を紹介します。
(参考:https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000951119.pdf)
※厚生労働省の資料を基に、具体的なケースを想定できるよう記述しましたが、以下のケースすべてで受給額を増やす・期間を伸ばすことができることを保証するものではありません。最終的にはハローワークの窓口の方の判断、いわば運要素も介入することを十分ご理解ください。
会社都合の退職である証拠を集める
そもそも会社都合退職であることが認められることで、2~3か月の給付制限は付かず、7日の待期期間の後すぐに給付金がもらえます。
メールなどのテキストや、1on1の録音などで、「退職勧奨を受けた証拠」「賃金下げるなどの脅しの証拠」を集めましょう。
リストラや倒産はもちろん、賃金の未払いや大幅な減額、移転による通勤困難に陥った場合も、会社都合退職と認められるケースがあります。
特定理由離職者になる
倒産やリストラと言った一般的な会社都合でなくとも、「会社都合」と認定される可能性もあります。
たとえば雇用契約書と大きく異なる労働時間であった場合や、明確なハラスメントにより就業の継続が困難な場合がこれに当たります。
退職前であれば、残業時間が分かるタイムカードや、ハラスメントに当たる録音音声やテキストを集めておきましょう。

もちろん虚偽のでっち上げは訴えられるリスクがあるのでダメ!!
教育訓練を受講する
教育訓練は再就職を目的とし、厚生労働省・都道府県が実施するもの(公共職業訓練)や、民間のスクールも対象(委託訓練)となっています。
先ほど紹介した通り、教育訓練を受けることで自己都合退職による給付制限が緩和され、7日間の待期期間の後比較的早めに給付金が受け取れます。
さらに条件を満たすと通所手当(交通費)や受講手当が受給でき、実質的な受給額増額に繋がることも多いです。

IT、デザイン、介護、製造系など、ニーズの高いスキルが身に付くから受講して損ナシ!
ただし、就職(バイトや事業も含む)をすると失業保険は原則終了になるため、早く再就職したい方は注意が必要。
とはいえ転職活動自体は問題がないほか、給付日数が多く残っている方は再就職手当がもらえる可能性があるため、こちらも要チェックです。
受給延長手続きをする
失業保険(基本手当)は、原則として離職日の翌日から1年以内の期間に支給されます。
しかし、以下のような理由で 一定期間働くことができない場合、受給期間をその分だけ延長できる制度があります。
- 病気・ケガで働けない
- 妊娠・出産・育児で働けない
- 親族の介護で働けない
- 60歳以上で休養したい
① 申請書を入手する
ハローワークで「受給期間延長等申請書」を受け取ります。
同じ様式には他の延長(教育訓練給付の延長)の申請も含まれる場合があります。
② 必要書類をそろえる
- 受給資格者証(または離職票)
- 延長理由を証明する書類(例:医師の診断書、出産証明書、介護証明など)
などが必要となります。
③ ハローワークへ提出
窓口で提出するほか、郵送や代理提出でも可能です。

こちらももちろん、虚偽の申請は特大リスクになるからダメだよ!!!
まとめ|失業保険は「裏ワザ」ではなく「公式制度」を正しく使おう
失業保険は、制度を正しく理解すれば「早く・長く・多く」受け取ることが可能です。
一方で、「給付額を増やせる」とうたうサービスの中には、制度を悪用したものや、詐欺まがいのものもあることが最近分かりました。
大切なのは、厚生労働省やハローワークが認めている正規の制度を、自分の状況に合った形で活用することです。少しでも迷ったら、第三者サービスに頼る前に、まずはハローワークで確認するようにしましょう。

知り合いの中には、自力で証拠を集めて100万円増額した人も!
退職前なら特に対策しやすいので、安全な方法で正しく対策しようね!


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